2009年8月21日金曜日

驚愕のタマホームCM

驚きです。驚きまくってます。
木村拓哉が出演しているタマホームのCMを見てそう思いました。

このCMには三つのパターンあります。
キムタクがカラフルな色使いの部屋で玉木代表取締役からメールを受け取り「タマちゃん?」と繰り返すのが「誕生篇」。
キムタクが水槽のでかい魚に餌をやりながら「タマホームのタマは玉木社長のタマ」と言うのが「タマホームのタマは篇」。
キムタクが電話を次々取った後、「もし、ビバリーヒルズにタマホームを建てたなら」と言うのが「ビバリーヒルズ篇」。

タマホームのCMと言えばいままで「♪ハッピーライフ♪ハッピーホーム♪タマホーム♪」ってなごみ系の音楽で家族の幸せそうな姿をCMにしていたのに、この豹変ぶりは一体…。タマホームはおいら的には認知度の高い住宅メーカーだと思うけど、これほど奇を衒ったCMを打つとは。まったく驚きです。

他の住宅メーカー、たとえば積水ハウスが元宇宙飛行士の毛利衛、多部美華子を起用し、「技術」や「環境」と言った明確なメッセージ性を持ったCMを流しています。パナホームにしても省エネルギー性能の優れた電化住宅の表彰制度2008年「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エレクトリック」の受賞を前面に出し、技術性と環境性能をアピールしたCMを松たか子で流していました。
比べて見ると今回のタマホームのCMが住宅メーカーではいかに変り種であるかがわかります。

「もし、ビバリーヒルズにタマホームを建てたなら」は視聴者の99.9%はビバリーヒルズに家など建てない事を承知で流しているわけですから、ほぼ全員が「ビバリーヒルズ?関係ないね」ぐらいの感想でしょう。このCMは「タマホーム?関係ないね」という印象すら持たれかねないというリスクを背負った、ある意味すごいCMです。

「誕生篇」「タマホームのタマは篇」はまったく住宅に関する内容が出てきません。もしタマホームを知らない人にこのCMを見せてもなんのCMか分からないでしょう。かろうじて経験則から「ホームがついているから住宅関係かな」くらいの認識だと思います。そうなると、この二つのCM内容は「我社の住宅は技術・エコロジーとも最高です」というアピールではなく「タマホーム」という名前自体の認知度を上げる為のものではないかと予想できます。

マーケティングに詳しい青山学院大学講師の山本直人氏による著書「売れないのは誰のせい?」によると「一般消費財のように購買にともなうリスクが低いほど、商品認知を目標とした情報受動型の広告効果は成立しやすく、タレントを起用した場合はその成功率は短期的に向上する」とあります。つまり新しい飲料水とか洗剤とか文房具などの、購入して「失敗」と感じても惜しくない商品は、CMのタレント起用で視聴者に名前と印象の植え付け効果があり、売上に反映すると言う事です。逆に言うと、テレビ、車、住宅など視聴者がCMの印象以外にも情報を丹念に調べてから購入するような商品には、タレント起用で商品認知目的の広告を行ってもイメージ作りには役に立ちますが売上には大きく反映しないと言えます。タマホームはメーカー名で商品名ではありませんが「認知度向上」の目的でこの手を打ってきたことは充分考えられます。

当然、このCMは広告代理店が考えたものでしょう。
日本の二大広告代理店と言えば電通と博報堂です。
両社の2010年3月期第1四半期決算の中で、両社とも全売上から60%を越えて占める「テレビ」と「マーケティング・プロモーション」の売上を前年同期と比較すると、電通は30.1%、博報堂は37.9%も落ち込んでいる事が判明しています。昨年からの世界的不況は広告代理店の台所事情を厳しくしているのは間違いないでしょう。もちろんこの二つ以外の広告代理店であっても推して知るべしです。

それを前提にして穿った見方をすると、不況の中収入の落ち込んでいる広告代理店が予算の最終決定権を持つ代表取締役を「キムタクに代表の名前を呼ばせましょう」「トップスターのキムタクに代表の名前を呼ばせれば代表の株も上がること間違いなしです」「代表の名前でタマホームのイメージを力強いものにしましょう」などとヨイショしまくり、上手いこと仕事を受注したとも考えられます。つまりCMを見る人をターゲットにしたのではなく、金を出してくれる会社の代表をターゲットにした、という考え方です。
おいらの当てずっぽうですが、案外近いかも(笑)。

さて、木村拓哉のこのCMは成功するのでしょうか?それとも失敗するのでしょうか?
タマホームという名前を視聴者に覚えてもらうのが最大の狙いなら一定の効果がある、と言えるかも。
名前を覚えてもらえれば選択してもらえるチャンスも増えると考えたなら、売上向上も見込めます。しかし先に記したように住宅のようなリスク商品の購入者はあらゆる情報を見比べて慎重に買うため、名前以外のアピールがない今回のCMは逆に不利なのではとも考えられます。売上に重点を置いているならあのCMはちょっと疑問だなあというのが、おいらの印象です。

CMの費用対効果がおおやけに発表される事はないので、事実はわかりません。
不況の只中、企業の広報部には現状より更に厳しい費用対効果測定の為の物差しが求められて行く事になるでしょう。
時代に合わせた明確な物差しを持っている企業ってどのくらいあるんでしょうね。興味があります。

…それにしても、積水ハウスの木造住宅「シャーウッド」のCMは天海祐希なのですが、なぜか独身女性を想定したCMなんですよねぇ。あれってやっぱりアラフォーをターゲットにしているのでしょうか。あのCMはどう見てもアラフォーに「自然の木造の家はこんなに素敵ですよ、建てて住みましょう。」って誘っている風にしか見えないんですよねえ。そのうち「アラフォーなら家を建てるのが当たり前」なんて世の中が来るのでしょうか…。