2009年8月9日日曜日

右傾化はどこへ行く

内田樹先生のブログから

ブログ内田樹の研究室より抜粋
広岩さんは何年か前に私が毎日新聞の紙面批評を頼まれたときに、司会をしてくれた人である。
たいへん冷静で目配りのゆきとどいたジャーナリスだった。
それからは毎日新聞で広岩さんの署名記事があると、まじめに読むようにしている。
お会いしたとき、広岩さんは日本の言論の急速な「右傾化」にずいぶん心を痛めていた。
とくに一部で突出している核武装論と、それに対する若者たちの無警戒に危機感を示しておられたので、もっぱら話題はそれに終始した。



「広岩さん」とはおそらく広岩近広氏のことだと思います。
上記は内田先生のブログだから仕方ないけど、「右傾化」を語るならまず語る自分の「立ち位置」を示さなければならいと思います。
なぜなら同じ言論でも右に立っている人が読めば「少しだけ左から自分の方へ寄ったな」と感じるし、真ん中に立っている人なら「少しだけ自分から右へ動いたな」と感じるし、左に立っている人が読めば「自分から凄く右へ離れて行った」と感じるでしょう。広岩氏が「心を痛めるほど急速な右傾化」と感じている立ち位置はどこなのでしょうか?ぜひとも広岩氏本人にどこかの機会で語っていただきたいものです。

右傾化のほどは分かりませんが、「一部で突出している核武装論」と「それに対する若者たちの無警戒」は理解できます。
原因は情報量が増えたからです。
ネットが発展途上国まで整備されて、その国の国民の生の声がネットに上がるようになりました。日本人はそこで隣国である中国国民の生の声に触れました。孔子の第75代直系子孫である孔健氏が「日本との戦争は避けられない」という題名の本を出版しましたが、あの内容は決して大げさな物言いではない、ということを多くの日本人がネットを通じて直に確認していると言うことです。韓国でも同様の反日感情があることはネットで明らかになっています。「核武装論」はそれら事実から身を守ろうとする自己防衛行動であると言えます。「それに対する若者たちの無警戒」も同様です。「中国はそのうち攻めて来るかもしれない。その時核が必要になるかも」という情報が既にあるので積極的に反対する気になれないのです。

こうした理由から「核武装論」(もしかしたら右傾化の言論も含めて)を理屈で論破しようとしても無理でしょう。ネットから次々と入ってくる反日情報という名の沈殿物が溜まりに溜まって危機感を醸成し、現在の「核武装論」等に発露しているわけです。手順から言って沈殿物を取り除くことの方が先ではないでしょうか。取り除くには「中国・韓国は絶対攻めてこないよ」ということを証明しなければなりません。しかしそれを証明するのは不可能です。事実尖閣諸島問題、竹島問題等不安材料が横たわっているのです。

こうなると解決策は危機感をきちんと担保してやるより方法がありません。
核武装するかって?
いえいえ核武装は全く現実的ではありません。まず世論の同意を得られないでしょう。

担保するには現実的な方法しかありません。
まず、大抵の核はミサイルで飛んでくるので、飛んでくるミサイルを防ぐ新技術を開発します。それを完成させて配備します。
そして日本近海に入られないように原子力潜水艦を数隻配備し、24時間交代で日本近海を監視させます。
この二つを実行するだけで、いきなり核攻撃を喰らって手も足も出ない、という状態を避けることができます。
そして最後に核のような汚染をしない新型爆弾の開発です。それも直接爆弾を開発するのではなく、それに転用できる技術を開発するのです。開発していつでも爆弾を作れるぞという体制にするのです。同じ威力を持ちながら汚染のまったくない爆弾を開発すれば「核兵器」ではない、ちょっと強めの爆弾という位置付けですから、世論にも国際的にも顔が立ちます。

もちろん「憲法九条」はそのままでよいです。核に負けない爆弾(の転用可能な技術)を持ちながらも国際社会には「我々は侵略はしませんよ」という顔を向けておくのです。もし我国に一発でも弾が飛んできたら実際に爆弾作って「正当防衛」を唱えて反撃すればよいだけですから。「殺人」は世界中どの国の法律でも禁止されていますが、「正当防衛」はどの国でも認められているのです。

新型爆弾は更に付加価値をもたらしてくれます。こういった技術を持つ日本を中国やロシアに渡す訳にはいかないと、今まで以上に米国は日本防衛に力を入れてくれるでしょう。
さらに言うなら日本は武器輸出を禁止しているので、これら技術が外国に流出することはありません。

法的にクリアしなければならない部分があるのでしょうけど、このくらいの備えがあれば「核武装論」等の右傾化なんてどこかへ吹っ飛んで行くのではないでしょうか。それどころか再び日本は「平和ボケ」と呼ばれるまでに安穏とした世情に戻れるかも知れません。ああ。あの頃がなつかしい…。