2009年8月4日火曜日

百害あって一利なしの大前研一論

以下は「大前研一ニュースの視点」の記事で「日本の外交センスが招いた混乱~北方領土返還交渉から考える」という内容からの抜粋です。

 日本の「外交センスの酷さ」を露呈したもの
 だと私は思います。そもそも今年の2月頃には、ロシア側は「3.5
 島返還」という独創的な答えを用意していたと言われています。

 ところが、外務省OBである谷内氏の発言により日本国内の反
 発が強まってしまい、5月にプーチン首相が来日したときには、
 「3.5島返還」の案を持ち出せない状況になっていました。

 その間に麻生首相による「歴史的には日本の領土である」とい
 う問題発言が飛び出し、さらにはそれを衆議院で可決すると
 いう非常識な事態に発展しました。

 それに対し、激昂したロシア側は、「日本が歴史認識を改めない
 のならば、北方4島返還の交渉そのものを禁じる」という法案を
 成立させてしまった、というのが現在の状況です。

 一言で言えば、「最悪」です。日本が非常識な対応を取らなけれ
 ば、メドベージェフ大統領と麻生首相の間で「3.5島返還」で
 決着していたと思います。

 それが1956年の日ソ共同宣言にまで後退して、「2島返還」で
 おしまいになってしまったのです。

記事全文
http://www.ohmae.biz/koblog/viewpoint/1335.php

大前研一の論はロシア側が「3.5島返還する」ということを前提にしています。ところが、ロシアは世界に向けてはもちろんロシア国内向けにも「3.5島返還」などという話を表明したことはありません。つまり「3.5島返還」は単なる大前の思い込みなのです。「そんな風の噂もあるよ」ぐらいのレベルの話なのです。そんな噂話を持ち出して日本の対応が「最悪」「非常識」などと論ずる大前こそ「非常識」で「最悪」な輩と言わざる得ません。

大前はこの記事よりも前にも何度か北方領土に関して自らの考えを記事にしています。そちらも参照してみてください。そのどれもが北方領土解決を急かせ、日本側の妥協を促した記事内容になっています。なぜ大前はこれほどまでに北方領土問題に日本の妥協を促すのでしょうか?

答えは簡単です。大前自身のコンサルティング・ビジネスがロシアと日本のビジネスの仲介を利益としているからです。大前は早く大々的にこのビジネスを展開したいと考えているのでしょう。実際ロシア国内には日本とビジネス提携したい企業は山ほどあります。そしてロシアに眠る資源を狙っている日本企業も多くあるのです。これらのマッチングは「労少なくして益大なり」の美味しいビジネスです。そして大前は北方領土問題がこのビジネスの足枷になっていることを熟知しているのです。

大前研一は一部で非常に人気があるようです。彼の言動はそういった一部の人に大きな影響があると思われます。このことを利用して大前は、まるでこの国の利益を代表しているような素振りで語りながら「…だから北方領土は日本側の妥協が必要」的な内容の論陣を展開して、解決すべきだと連呼しています。非常に汚いやり方です。「己れの利益誘導のために北方領土を切り売りしようとしている」と言っても差し支えないレベルだと思います。

経済を抜きに国家を語ることはできませんが、経済のみで国家を語ることもできません。どちらの場合も内容が歪んでしまいます。大前のような「経営コンサルタント」が専門外である国家について語る時は注意が必要です。

では「北方領土はどうなるの?」と思っている方もいると思います。別にどうすることもありません。「四島一括返還」を変えなければ良いだけです。百年でも千年でも諦めない!という姿勢を打ち出すのです。誰もが知っていることですが北方四島占拠はポツダム宣言受諾後に当時のソ連が攻めて来た「火事場の泥棒」行為です。盗まれはしたけど犯人も盗まれた物も分かっているのですから、諦める必要はありません。そしてここで決して諦めないという姿勢は竹島問題にも大きく影響します。ひいては中国が虎視眈々と狙う尖閣諸島への牽制にもなります。ロシアは今後百年現在の体制を維持できるわけありません。必ず大きな変革期にぶつかります。日本はそれまで準備を怠りなく「家宝は寝て待て」を決め込んでいればいいのです。